収益不動産再生

相続・贈与

インスペクション

空き家になる大田区の賃貸住宅2棟、リフォームと建替えで収支計画などを比較、相続対策も納得して進めている。

相談内容

大田区のとある商店街からほど近い角地、約60年前に相続した土地が今回の相談内容。そこに、築30年の戸建てと築45年の倉庫兼居宅の2棟が建っている。いずれも定期借家にて人に貸しているが、1年後には2棟ともに空き家となる予定。今回の相談者は80歳と高齢で、子供が二人いるが、いずれもすでに持ち家があるため、建物を再利用するべきか悩んでいる。
相続対策含めて、この土地を今後どのように利活用していくべきかを相談したいとネクスト・アイズに訪れる。

問題点の抽出

・定期借家ではあるが、解約通知時期や現状復旧の取り決めなどが明確になっているのか確認
・築30年以上の2棟の建物が構造的に問題ないか、違法性がないか、再利用が可能か確認
・現状2棟は2階建てと3階建てだが、建替えた場合に容積率最大限の建物が建つのか、また最大限建てられたとして、賃貸を計画した場合に、収支計画は成り立つのかの検証
・相談者も80歳と高齢のため、金融機関に2点を確認。「事業用ローンを組め            るのか」、「資金計画は成立するか」
・相談者以外の法定相続人が将来この土地をどのように活用したいと考えているのか確認
・不動産だけでなく、金融資産ほか相続財産の把握と相続税を試算

提案

・定期借家契約内容を確認。解約通知時期および退去時における現状復旧の有無の確認し、予定通りのスケジュールで明け渡しができることを確認
・既存2棟のインスペクションを実施し、建物躯体の劣化具合や現状の間取り・仕様の遵法性を確認
1棟は登記上は木造であったが、1階の梁に鉄骨を利用しており、違法性があることを確認。また、外壁の劣化、建物の内部の雨漏れ、鉄骨階段の腐食などが各部に見受けられ、リフォーム費用が当初の想定よりかさんでしまうことが判明。
・市場調査を実施し、2パターンのプランで収支計画が成立するのかを検討。
パターン1は、角地緩和を活かして容積を最大限に消化し、複数の間取りを  入れた「木造3階建7世帯」。パターン2は、容積最大限ではないが価格を抑えた効率プランの「木造2階建4世帯」。そうしたところ、3階建ては賃料は取れるものの、2階建てに比べて大幅にコストUPとなってしまい収支が悪化することが判明。
・収支のよい2階建建替えプランと事業計画を作製し金融機関に打診したところ、評価も良く、借り入れも可能であることが判明。ただし、本人も高齢のため、「事業承継者が必要である」という条件が付される。
・法定相続人である子供2人、そして相談者と面談し、子供1人の事業承継の意思も確認。
・税理士との面談を実施し、本人の不動産以外の相続財産を整理。
当該地には賃貸住宅を建て、貸付事業用の小規模宅地の特例を利用すれば、相続対策としても有効であることを税理士からもご説明。

費用

・収益不動産再生診断   ・・・・・・200,000円 ※①
・既存建物インスペクション   ・・・・・・①に含む
・相続税の税務相談   ・・・・・・①に含む
・市場調査報告書の提出   ・・・・・・①に含む
・リフォーム費用算出及びリフォーム後の収支計画書の提出   ・・・・・・①に含む
・建替プラン作成および資金計画書、事業収支計画書の提出 ・・・・・・・・①に含む

 

                    

コンサルティング結果

相談者本人が80歳と高齢であることから、まずは既存の建物を再生する診断から始めました。
再生するにあたり立ち退きは不可欠のため、定期借家契約ではありますが、滞りなく立ち退きができるのか、退去時にトラブルにならないような条項がしっかりと記載されているかどうか等を契約書で確認をし、問題ないことが分かりました。

 
 

その後、既存建物のインスペクションを実施してリフォームプランとその費用、そして収支計画を提案しました。

 

インスペクションの結果、躯体の劣化、雨漏りなどリフォームに多額の費用が掛かるため、収支も悪化することが判明。そのため、建替えを行った場合の事業修正計画を作製、提案した。また、本人の金融資産を使える点、金融機関からも借入が可能であることから、相続対策にも有効と判断し、今回は収益不動産再生ではなく、建替えという方向で進めることになりました。

 
 

【結果】
当初は定期借家契約の利点を生かし、低賃料の入居者を退去させ、既存建物を再生し、より高い賃料にて運用できれば、という本人の思いがあり、収益不動産再生診断を行いました。インスペクションの結果、再生におけるリスクが高いことが判り、ご説明した上で、建替えへの計画となりました。
 
当初計画よりも、ご本人も金融資産の持ち出しが多くなったこと、あらためて土地に抵当権を付けることとなってしまいましたが、「再生」に対ししっかりと診断・検証した結果、「収支」「相続対策」において「建替え」をすることが良いと判断ができたため、納得して現在にいたっています。
現在は賃貸住宅の計画ということもあり、完成入居時期をしっかりと見定め、収益性の高い2階建てプランをベースに、木造の建築会社3社でコンペを実施し、比較検討を行っている。

また、コンサルタントからの提案および税理士との税務相談の場などに、いつも相談者と法定相続人の子ども2人、全員がお集まりいただけたことで計画も順調に進んでおります。
やはり相続対策においては、ご家族の協力が必須であることをあらためて感じた事例でした。

担当者

森下 明

住宅コンサルタント

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