自宅を建て替え

家族の記憶を引き継ぐ、こだわりの木の住まい 東京都 S様邸

今回リポートするのは、築年数の経った木造家屋を建て替えたS邸。
新しい家の庭には旧宅にあった庭石や樹木、灯篭や門瓦などを再利用。
また、住まいの内部でも先祖の想いが巧みに継承されています。
使いやすい間取りと設備に生まれ変わるまでのストーリーをうかがいました。

珪藻土や無垢の木など、自然素材を多用した住まい。
組子細工をはめ込んだ引き戸の向こうは、シューズクロークとなっている。

リフォームを決意するまで

愛着はあっても機能面を考えて、建て替えを選択

お母様「この場所には結婚以来ずっと住んでいて、古い家には愛着がありました。でも、歳月とともに傷みが出て、雨漏りもするようになって。冬もすごく寒くてヒートショックが心配でした。また、子どもたちが独立して夫と二女の3人暮らしになったのも、建て替えを決意する大きなきっかけになりましたね」

お嬢様「古い家は、動線や水廻りの設備なども昭和スタイルで不便でした。例えば、不意の来客の際、客間にお通しするのにいちいち居間を横切らなければならなくて。居間が散らかっていると『ちょっと待ってください』と慌てて片づけなければならなかったんです」
上/広々とした玄関ホール。全館空調の採用によって、冬も夏も、家の中は常に快適な気温と湿度が保たれている。
下/床はウォールナットのヘリンボーン仕上げ、天井にベイマツを使用したダイニングは、温かみのある雰囲気。

ネクスト・アイズとの出会い

メーカーと進めていたプランに納得できず、相談を

お母様「ネクスト・アイズに相談したのは、建て替え計画がスタートして、住宅メーカー2社からプランを提案されていたときです。その2社から契約を迫られていたのですが、どちらのプランも自由度がなく、しっくりきませんでした。
そんなとき、主人が『小野さんに相談してみよう』といい出しまして。実は、10年以上前にネクスト・アイズ主催のセミナーに参加したことがあり、小野さんの著書も読んでいました。なので本当はもっと早くご相談すればよかったのですが、ついうっかり抜けていました(笑)。
その後、小野さんに2社の図面などをお見せすると、提案に対して金額が高すぎると。お話の内容に納得できたので、結局2社とは契約せず、ネクスト・アイズとコンサルティング契約を結び、設計事務所3社のコンペを開くことにしたのです」
右から奥さま、お嬢様、ネクスト・アイズ 小野氏、大槻ホーム 渡邊氏、一級建築士事務所光設計 栗原氏。

光設計に決めた理由

自然素材を多用した住みやすそうなプランに惹かれて

お嬢様「家づくりの希望は、室内の気温差がないこと、1階には事務所と車庫をつくること、あとは全体的に動きやすい家にしたいということでしたね」

お母様「最初、3社にそんなお話をしてそれぞれプランを出してもらったのですが、その中で一番しっくりきたのが、自然素材を使った光設計・栗原さんのプランでした。住みやすそうだったのと、古い家の長屋門や庭木、亡母が大切にしていた人形や趣味の作品などを新しい家の中に組み込む提案がされていたのが心に響きました」
上左/庭に面した1階の客間。仏壇を置いたこの空間には、お祖母さまの思い出の品が意匠として配置されている。
上中/生前、お祖母さまが集めた民芸品を壁一面に。「今の自分があるのもご先祖のおかげですから」とS様。
上右/客間の欄間には、やはりお祖母さまが趣味でつくった鎌倉彫の見事な盆をはめ込んで。
下左/客間と廊下の間には、組子の障子戸を採用。あえて素通しにすることで、障子戸越しに植栽が美しく見える。
下右/松やモミジ、枝垂れ桜などが植わった庭全景。白い玉砂利を敷き詰めた庭は明るい印象。

印象に残る家づくりのあれこれ

一つひとつを楽しみながら、納得して決めることができた

お母様「家づくりでは、動線や間取り以外に、素材や色にもこだわって、いろんなショールームを栗原さんと一緒にまわりました。時間をかけて家族みんなで納得しながら決めていけたので、すごく楽しかったですね。その分、完成するまでの時間はかかりましたが、それ以上に満足のいく家をつくるほうが大切だったので、工期が延びても苦ではありませんでした」

お嬢様「仕様設備を決める際も、母がインターネットで見つけた江戸唐紙や障子の桟を和室に使ってもらうなど、こちらからの提案を栗原さんに生かしてもらえたのもよかったです」

お母様「私は玄関そばのダムウェーター(荷物専用昇降機)が便利で、うれしいですね。あれがあるだけで階段の上り下りが楽にできますから」

お嬢様「あとは全館空調。湿気が高い梅雨の時期も家の中がカラッとしていて快適です。ほかにも食洗器や浴室暖房乾燥機など、設備が一気に新しくなったのと動線がスムーズなのがうれしくて。外出していても早く家に帰ろうって思えます (笑)」
左/「庭屋一如」を実現する庭。旧宅の庭木をそのまま生かし、庭石や灯篭も再利用。古い長屋門に使われていた瓦は庭に埋め込み、アクセントとしている。
中/ダイニングへと続く独立型キッチンは、クッチーナのオーダーメイド。
右上/奥さまの寝室。珪藻土と木を用いた居室は空気まで清々しい。
右下/第2のリビングとしても活用できる、ゆったりとしたバルコニー。

今、振り返って思うこと

困ったら相談。信頼できるパートナーがいる心強さ

お母様「改めて思うのは、家づくりにかかわってくださった方が皆さん、いい方だったということです」

お嬢様「特に小野さんは家づくりの間中、常に私たちの後ろについていてくれたような印象です。住まいのことはもちろん、完成後の保険の相談にものってくださったので頼りになりました」

お母様「だから、困ったら小野さんに電話していましたね。カーテンをどうしようとか、引っ越し業者さんをどこにしよう、ということまで相談していましたから(笑)。そういう面倒見のよさは栗原先生も同じで、こちらがどんな提案をしても拒否せず、プロの視点で返してくださる。私と好みが似ていたのもうれしかった点です」
端正な中に温かみを感じる外観。夜になると門扉に照明が灯り、地域を照らす。

コンサルタントの "目"

こだわりを叶えるなら 相性のよい設計事務所

すでに進行していた住宅メーカーのプランを見たとき、S様のニーズと合致していないことがよくわかりました。
住宅メーカーは規格住宅である以上、いくつかの選択肢から選ぶことになります。つまり、個々に素材からこだわりたい場合、相性のよい設計事務所と腕のよい工務店に依頼するほうが納得のいくものに仕上がるのです。
そこで当社が間に入り、建築家数社のコンペを実施。施工会社も栗原先生の家づくりに長年携わっているベテラン大工を立てたことで納得の家が生まれました。
ネクスト・アイズ
小野 信一さん

設計事務所のメッセージ

家と並行して外構工事も

S邸は、家の記憶を引き継ぐ、自然素材でつくった〝呼吸する家〞です。そのこだわりは細部にまで息づいていますが、もうひとつ気を配った点を挙げるなら、住まいと外構工事の同時施工です。庭は住まいの一部なので、部屋から見た庭が美しくあるよう配慮しています。
一級建築士事務所
光設計
栗原 守さん

施工会社のメッセージ

期待に応える質の高い仕事を

大きな家なので工期を短縮するには大工の数を増やせばよいのですが、質のよさを重視するS邸ではそれはせず、もっとも腕のいい大工ほぼ一人が木の刻みなどを担当しました。栗原先生のプランを実現できる質の高い仕事は、大手には真似できない当社の強みと自負しています。
大槻ホーム
渡邊 紳也さん
物件名
東京都 S様邸
構造工法
木造軸組工法
設計
光設計
施工
大槻ホーム
住宅コンサルタント
小野信一(ネクスト・アイズ株式会社)

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