さて、わが社では年明け早々からいろいろなところでセミナーを始めています。その中から、賃貸セミナーに来られたお客様の相談事例をご紹介します。
親の相続が発生し、埼玉にアパートを所有することになったとのこと。重量鉄骨の3階建てで、築30年。現在2DKが12室で、うち3室が空室。新築当初は 10万円近くで貸していたが、現在は 5.5万円から 6万円とのことです。
ご本人は賃貸経営など経験したことがなく、空室が出るたびに賃料が下がり、収支が合わなくなっている点、そろそろ2回目の大規模修繕が必要で、手持ち資金を出さなくてはいけない点から、売却も考えているようでした。
大規模修繕にどのくらい資金が必要なのか、リフォームしてでも維持すべきなのか、その場合の注意点は、そして現在いくらくらいで売却できるか、というのが主な相談内容でした。
まず大規模修繕ですが、延床面積約130坪の陸屋根3階建てですから、屋上防水、バルコニー防水、外壁の塗装などで約 500万円位は必要です。また、築30年ということであれば、給排水関係など劣化診断も必要です。10年以上前に前回は実施したとのことですから、次回は5年以内でしょうね。と答えました。
また、今後維持していくためには、バス・洗面化粧台・トイレが一緒になっている3点ユニットを変更し、間取りも畳敷きの2DKから1LDKに変更しましょう。費用も1室あたり 200万円程度のリフォーム費用がかかりますが、相場を調べてみると 8万円位まで回復するかもしれませんと答えました。
ただし、前提条件として会社を経営するのと同じように、賃貸経営・税務知識を勉強して、自身のアパートを徹底管理することが必要ですが、できますか?と、質問しました。
売却に関しては、事業用のアパートなので簡単です。一般の住宅地であれば、取引事例を調査する必要がありますが、アパートなので収益還元価格にて算出しました。
埼玉の郊外の市なので 10%としました。
年間収入: 792万円( 5.5万円/1室×12室×12か月)
売却想定表面利回り: 10%
売却金額: 7,920万円( 792万円÷10%)
年間で 792万円の収入がある収益物件に、いくら投資しますかという意味です。都心の港区・千代田区あたりでは、表面利回り約4%。23区内であれば5~6%。東京都郊外であれば 7~8%というのが、投資の目安といわれています。
親からの相続で取得したものですから、愛着があるのはわかりますが、客観的なアドバイスとしては、将来財産ではなく負動産になる恐れがあり、賃貸経営に前向きでないのなら、売却した方がいいですよとお話ししました。