自宅を建て替え

ご両親から受け継いだ築42年の賃貸併用住宅を建て替え/東京都新宿区

ダイナミックな梁のあらわしが素晴らしいリビング。
守らているような木の優しさを感じられる憩いの空間だ。

受け継がれる住まい

M様夫婦がご両親と住んでいたご自宅は築42年。6世帯の住人が暮らす賃貸併用住宅であり、これまでご両親が賃貸管理をされていた。住まいづくりを考え直し始めたきっかけは3年前、賃貸部分の雨漏りがきっかけで、修繕もしくは建替えという選択肢が出てきた時のこと。それまでは小さな修繕は自分達の手で行ってきたものの、ご両親が年齢を重ねた今、賃貸経営を受け継ぐ時だと感じられたそうだ。

家づくりの不安と住宅コンサルタントとの出会い

老朽化した建物なので耐震についても不安があった。そこで賃貸管理を受け継ぐとともに、修繕ではなく建替えを考え始めたM様。「まずはどこの建築会社に頼んだら良いだろうか?解体費用は?住人の退去費用は?果たして本当に銀行からお金を借りることはできるのか?」といろんな疑問が頭をよぎる。仕事の休みが月に1日程度のM様にとって、これらを全部解決していく時間を考えただけでも大変な労力。「こんな状態で本当に家が建つのだろうか?」そんな不安から、賃貸併用住宅の建替えは自分が思っていたより甘くないと気づき始めた。

そんな時、ビッグサイトで住宅イベントが開催されているのを知り、夫婦ともに足を運んだそうだ。そこで住宅コンサルティング会社のネクスト・アイズと出会う。はじめは「”住宅のコンサルティング”とはなんだろう?コンサル費用や、本当に無駄なお金を使わずに建てることができるのか?自分の理想の家が本当に建つのだろうか?と、多少なりの警戒心を持ちました。」と話すM様。しかし、住宅コンサルタントの栗原氏と出会い、なにから始めたら良いのかわからない現状を整理するにはプロの手助けが必要だと考えなおしたそうだ。後に、ネクスト・アイズの”賃貸経営コンサルティング”を利用することになった。

栗原氏は、どのタイミングで、なにを、どうやって決めていくのか。その全体の流れを把握し、進行管理(サポート)、また住宅に関する知識を持ってアドバイスすることで、M様邸の計画を最後まで安全に進めることが役割だ。(賃貸市場調査などの事業計画からはじまり、賃貸人の退去手続き、施工会社の選定、管理方法、節税方法など。)こうして住宅コンサルタントとともにM様邸の住まいづくりが始まった。
1. 4階の螺旋階段。柱と梁をあらわした吹き抜けは、立体的な空間で美しい。
2.やわらかい光と木の香りに癒される浴室。
3.地下ガレージと直結している、愛犬アルちゃんのシャワールームが作られた。
4.清潔感のあるホワイトに統一されたセミオープン型のキッチン。
5.アルちゃん専用に造りつけのゲージが用意され、嬉しそうな顔を覗かせる。

設計図はラブレター

設計は栗原氏がM様のご要望をヒアリングし、3社の建築家を選定した。コンペ式でプランが提案され、その中でもしっかり要望が組み込まれている建築家を選別する。最終的に、自由な発想とコストバランスの良さから、建築家の本多先生が担当することになった。

良いアイディアが溢れ、こだわりが図面上でどんどん叶えられていく様は楽しいものだ。「今はコンピューターグラフィックでパースが綺麗に描けるそうですが、本多先生の事務所から届く手書きスケッチに心が踊りました。毎週届く設計図とスケッチがラブレターのようで楽しみで仕方なかったですね(笑)。」とM様。これこそ、まさに注文住宅の醍醐味だろう。

また、建築家への報酬についても栗原氏が価格交渉し、良心的な価格で依頼することができたとのこと。こういったお手伝いができるのもネクスト・アイズの強み。

施工会社の選定

当時、消費税増税前の建築ラッシュによる職人不足と建築資材の高騰もあいまって、施工が受けられる建築会社は限られていた。M様は栗原氏がセレクトした建築会社の中から、選んで決めていたものの、最終的にはコスト面で折り合いがつかない事に…。一時は施工会社がなかなか見つからない事態になったが、ご縁あって“東光建設”がM様の夢の住まいを手がけることに決まった。

数々の夢が叶った住まい

見所満載のM様邸だが、一番の大迫力はなんといっても3階のリビング。梁と柱は60×60cmの木材。個人の自宅でここまで太い柱を使っているのは本当に稀で、コンサルタントの栗原氏も数え切れないほどたくさんの家を見てきたそうだが、このスケール感は初めてとのこと。三井住商建材のサミット工法では、まだ都内で3棟しか無い建物だそうだ。圧倒される柱のたくましさと、包まれるようなぬくもりは、まるで大きな樹の下で憩うような心地よさ。愛犬のアルちゃんもご機嫌な顔をのぞかせている。

また、ご主人懇親の作品と言われる浴室は、壁に使っている木材にこだわりが。木の香りと優しい色合いの米ヒバ材は「本当にカビが生えないかどうか、サンプルでもらった木板を毎日お風呂に入れて自分の目で確かめたよ」と笑いながら話すご主人。やわらかい光と香りが包み込む浴室は心身ともに癒される。また床には十和田石を敷いたことで、冬でも冷たくなく、滑りにくい快適な浴室になった。

さらに、本来計画していなかった空間もできた。それは4階の屋上へ出入りするちょっとした4.5畳ほどのコーナー。狭すぎず広すぎない“丁度いい”を感じられるこの空間。趣味である動物の写真を飾ったり、焼き物を並べたり、本を読みながらくつろぐのに本当に“丁度いい”のだ。扉を開けて屋上へでれば、そこには緑豊かな目白の自然が広がっている。
6. 3階テラスでは、木に包まれているようなぬくもりが感じられる。また、目隠しに使っている素材には和紙が使われている為、あたたかみのある優しい表情に。
7.広々と空を仰げる屋上は現在ご主人がタイルを敷詰め中。心地よい風を感じながら、友人たちとバーベキューを囲み、わいわいと賑わえる場所になりそうだ。
8.癒しの坪庭でご主人が苔を育成中。
9.たっぷり収納できるシューズクローク。
10.屋上へ入る手前のスペースで談笑するM様ご夫婦(左)と栗原氏(右)。ここはご夫婦の趣味である陶芸や、動物の写真を飾れるギャラリーになる予定。

家づくりの楽しみはつづく…。

終始笑みが絶えないご夫婦のお話をお聞きしていく中で、ご主人の熱意を感じられた一言があった。
「100%のものを完成させようと思ったら120%の力を出したい。でもそれは一人では絶対にできませんでした。コンサルティングでは建築費だけでなく、多方面での相談費(弁護士、司法書士、行政書士への相談)を自分一人で解決するより時間的、金銭的にも抑えられて良かったです。」

家づくりは計り知れないほど大変な労力がかかるが、時にはプロの力を借りながら進めていくことで、楽しむ気持ちをもつことができ、カタチとなって大きな喜びにつながる。そして、残念ながら予算の関係上叶わなかった部分をご自身の手で作り上げていくことが週末の楽しみになっているのだとか。

「やりたいことがまだまだたくさんあるんだよ!」と満面の笑みで話すM様の笑い声に、家づくりの成功と心からの喜びが感じられた。
物件名
東京都新宿区 M様邸
家族構成
ご夫婦・お母様
構造工法
サミットSH工法/一部鉄筋コンクリート造
施工
東光建設株式会社
住宅コンサルタント
栗原 浩文(ネクスト・アイズ株式会社)
取材・文/金瀬 ちゆき  撮影/田原 直

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