自宅を建て替え

リフォームから建替えへ 母と暮らす二世帯住宅/埼玉県

建築家であったお父様が建てた家を、リフォームして住み継ぎたいと望んでいたI様。
最終的に彼女が選んだのは、リフォームではなく建替えという選択でした。
家づくりの過程で、I様のこころはどう変わっていったのでしょうか?
最初のきっかけから伺ってきました。

2階、I様の生活スペースは、こだわりのインテリアと機能性がすみずみまで発揮された空間。

築40年をむかえ、老朽化した実家 母と住むために一念発起

お伺いしたのは、外構が昨日できたばかりというタイミング。住み始めたのはほんの半月前だというのに、すっきりと整理されたお家に案内していただきました。
 「まだ中は全然片付いてないんですけど」とおっしゃりながらも、下足収納やWICなど豊富な収納スペースがしっかり機能しています。住む人の持ち物や生活スタイルが反映されている、と感じる住まいで、それもお話を聞いていくうちに納得。I様とハウスビルダーの田村社長、とにかく和気あいあいと、雰囲気がいいのです。
 「田村社長のおかげです」と笑顔で語るI様と「いえいえ、しっかりと希望を伝えてくれたから」と謙遜する田村社長。家づくりを通して相思相愛なのが伝わってきます。このような相手にどうやってめぐり会ったのでしょうか。
 「もともとは父が建てた家だったのですが、父が亡くなり、母娘ふたりで住むには間取りが使いづらいことと、水回りも傷んできて。愛着のある住まいなので、リフォームして住み続けたかったんです」とI様。
 もとのお家は129平米の6DKという間取り。建築家のお父様が設計されたそうです。
1.左からI様、I様のお母様、田村社長、栗原氏。
2.2階リビングスペースは折上げ、ベッド上は勾配天井と空間に変化がもたらされる。TVボードは足をつけず壁付けに。掃除機ロボットの高さに合わせたコンセントなど、細かなところにも工夫が。
3.壁は珪藻土塗り。微妙な陰影が美しく、調湿効果で空気もさわやか。

コンサルティングを通して3社を選定、最終的な決定は…

リフォームをどのようにはじめようか?と漠然と考えながら運転中のある日、住まいづくりのイベントがあることをカーラジオで知ったI様。早速行ったイベント会場で、たまたま参加したネクスト・アイズのセミナーでは「建築会社の選び方」や「失敗しない家づくり8つの鉄則」など、これから家づくりをはじめるI様にとって、ちょうど聞いてみたい内容だったそうです。
 その後、自宅の現状とリフォーム計画をネクスト・アイズの住宅コンサルタント栗原氏に相談し、選定されたのは3社。大手ハウスメーカーとデザイン系建築事務所、そして埼玉の工務店㈲ハウスビルダーでした。
 「ハウスメーカーの方は、とても洗練された印象で、感じがよく経験豊か。デザイン系の会社は『どんな家にしたい?』と夢のあるヒアリングをしてくれました」とI様。それぞれに特徴のある提案で、会社選びも実りある工程だったようです。
 そのなかでも「一緒に作っていきましょう」という姿勢のハウスビルダー・田村社長には、とくにこころを動かされたそう。
 「専門知識を素人の目線まで下げてくれる社長の話に『なんて分かりやすい説明なんだろう!』と感動したことを覚えています」。

契約直前まで悩んでリフォームから建替えへ

依頼先が決まり、具体的にプランを詰めていく段階となったI様邸ですが、リフォームを進めるうえで、2つの懸念点が出てきました。1つ目はもとの家がとても広く、母娘ふたり暮らしには家のメンテナンスや掃除等が負担になること。2つ目は耐震面の不安でした。
 もちろん、この2点はリフォームでもしっかり現状調査を行い、問題を改善していけば新築並みの住宅にすることはできるでしょう。しかし、今回I様がリフォームから建替えへ少しずつ心を動かされていった理由は別にあります。
 それは、将来を見据えた家づくりに気づかされたことでした。まず前提として、間取りや住宅性能の向上・耐震補強を含めたリフォームと、新築の建築費用自体にあまり差がなかったこと。さらに、将来的にかかる家の支出をシミュレーションしたところ、リフォームと新築では15年後逆転することが分かったのです。
 「築40年の家にとって、リフォームとは病気の延命治療のようなもの。屋根や外壁の塗装などのアフターメンテナンスに加え、20年後には再度リフォームをしなければならない時がきます。その点、新築であれば、水回りや設備など部分的なリフォームで済む」という見解。これは栗原氏と田村社長ともに感じていたことだそうです。また、この先30年以上この家に住み続けていきたいというI様にとって、気力も体力もある今が新築のベストタイミングでもありました。
 「すごく悩みました。でも、栗原さんと田村社長が私のことを思って、検討する材料をいろいろ並べてくれた。選んだのは自分です」とI様。
 「住まいに関わる予算や間取り計画を比較するだけでなく、住む人の将来を視野に入れた検討材料を揃えることが、住宅コンサルタントの役目です。」。栗原氏はそれを踏まえて、あらかじめ新築もリフォームも対応できる建築会社3社を選んでいました。

住む人も過程を楽しむことで家づくりはいいものになる

はじまった家づくりには、I様自身も熱心に参加されました。本やインターネットでの情報収集はもちろん、家具店やインテリアショップ、ショールームなど30軒以上足を運び、新しい家に取り入れる設備や建材を自ら選んでいきました。ときにはスクラップブックや自作の資料を田村社長に共有したり、楽しくて充実した日々だったと振り返ります。
 「正直、希望に応えるのは大変でした。でも、それ以上に楽しかったですね」と語る田村社長。「そうそうこの洗面はね… 」「あのとき面白かったよねぇ」「あ!ここはさ…」とお家のいたるところで、家づくりの思い出話に花が咲いていました。家は、住む人と作り手の共同作品なのだと、改めて実感させられます。
 住み心地はどうですか?との質問に、I様は笑顔でこう答えてくれました。「間取りは前の家と大きくは変わっていないんです。でも、間口が広くなっていたり、デザインにこだわったぶん、毎日気分よく過ごせます。それに、本当にあったかくてうれしい」。
4.1階はコタツ派のお母様に合わせて和室に。

5.鏡面技術が美しいヤマハのシステムキッチン。床暖房入りで北側でもあたたかい。

6.こだわりの洗面水栓は田村社長の事務所にあったものをI様も気に入り導入。自らタイル施工にも参加した。

7.玄関から廊下、お手洗いまで床をフラットに。間口も広く、将来に備えた。

8.イメージにあうアイアン金具やモザイクタイル探しは楽しかったという。
物件名
埼玉県I様邸
家族構成
親子2人
構造工法
在来木造2階建て
設計
有限会社ハウスビルダー
施工
有限会社ハウスビルダー
住宅コンサルタント
栗原 浩文(ネクスト・アイズ株式会社)
取材・文/丸石 綾野 撮影/杉浦 章浩

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